常に追われていて、これでいいのかな、この生活が当たり前なのかな、と不安やフラストレーションがたまっていきました。
――そこから退職を決断されるきっかけは何がありましたか?
(中澤さん)最も大きなきっかけは育休から復職した後に、昇格試験の話が出てきたときです。会社はきっと私にとって良いことと思って薦めてくれていたのですが、その時に本気で、「これは私が求めている方向じゃない」と思ったんです。
じゃあ私はどういう働き方・生き方がしたいのだろうと悶々としていた時に、いしど式そろばんのことを思い出しました。失敗するかもしれないし、はたから見ると大手企業の管理職の方が見栄えはいいけれど、「こっちの生き方の方が私らしい気がする」と思いました。
--ご家族は起業に賛成だったのですか?
(中澤さん)夫は「大企業にいるから安泰とは限らない」という考えの人で、「やりたいことはやってみたら?」というタイプ。以前から、「老後は、そろばん教室をやってみたい」と話していたのも良かったのかもしれません。
思いつきで行動しているわけではないと伝わっていたのだと思います。日頃から感じていることを夫婦でシェアすることは大切ですね。
--会社に退職の意向を伝えたとき、上司や同僚は驚かれたのではないですか?
(中澤さん)IT系やコンサルティング業界への転職はありましたが、そろばん教室の経営ということで会社の人たちは驚いていましたね(笑)。
会社に伝えてからは、仕事と教室開校に向けた準備の両立が始まりました。もちろん業務の妨げや会社の迷惑にはなってはいけないので、当時、1歳半の子供を寝かしつけた後、夜中の2時、3時まで開業準備をしていたこともありましたよ。
--子育てと仕事と並行して起業準備を始められた中澤さんの行動力や決断力に驚かされました。
(中澤さん)決断できたのは育休中に情報収集をして動いていたのが大きかったです。教室運営のやり方、損益など起業後のイメージもできていました。
私の場合は「会社を辞めたい」だけでは辞めなかったでしょうし、「そろばんをやりたい」だけなら起業はしなかったと思います。「会社を辞めて、そろばん教室をやりたい」という2軸があったことが原動力になりました。
中澤さん、ありがとうございました!
後半では、コロナ禍で大変だったこと、副業・起業で迷っている人へ向けたヒントや今後の展望について、ご紹介します。