この記事を書いたのは
ファイナンシャルプランナー(AFP)・宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー
ファイナンシャルプランナーの資格を取得してから、お金に働いてもらうことを意識するようになり資産運用をスタート。日本株、米国株、投資信託、債券、ロボットアドバイザー、金銀プラチナ積立、ソーシャルレンディング、不動産などへの投資を実践している。
10年以上の資産運用経験をもとに、資産運用やお金に関する記事執筆やアドバイスを行っている。
目次
4月から6月は残業すると損をするのでしょうか?これは、社会保険料の仕組みに関係しています。
社会保険とは、健康保険、介護保険(40歳以上の被保険者のみ徴収)、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5つを指します。正社員やパート・アルバイト・派遣社員などで条件を満たす場合は、必ず社会保険に加入しなければなりません。
社会保険のうち、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、給与により1等級~50等級(厚生年金は32等級まで)に区分された、標準報酬月額にそれぞれの保険料率を掛けて算出されます。
【標準報酬月額とは?】
標準報酬月額とは、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもので、基本給の他に、役職手当、通勤手当、住宅手当、残業手当など、労働の対償として事業所から現金または現物で支給されるものを指します。
続いて、標準報酬月額はどのように決定されるかを確認していきましょう。
入社した時は入社時の給与額をもとに標準報酬月額が決定されます。その後、毎年1回標準報酬月額を見直します。
この毎年1回の標準報酬月額の見直しは、4月・5月・6月の3ヶ月間に支払われた給与をもとに計算され、3か月間に支払われた給与の総額を3で割って平均を計算して、標準報酬月額を算定します。
これを「定時決定」といい、定時決定で決定された標準報酬月額を元に算出された社会保険料が、9月分保険料から控除され、その後1年間は同額の社会保険料が控除されます。
4月から6月に残業をすることで標準報酬月額がアップし、その結果として1年間の社会保険料がアップする可能性があることが、4月から6月の残業はしないほうがいいと言われるという理由です。
【給与の締日や支払日によっては3月の残業分が影響します】
4月・5月・6月の3ヶ月間に支払われた給与が定時決定に関係するため、企業の給与の締日や支払日によっては、3月から5月の残業分が影響します。社会保険料を抑えるために残業代を抑えようと思っている場合には注意が必要です。
例えば、3/1-3/31に残業した残業代が4月に支払われる場合(末締め翌月払い)は3月に残業した分が影響します。
【例】
①末締め・翌月20日払いの場合
4月20日支払の給与・・・3/1-3/31
5月20日支払の給与・・・4/1-4/30
6月20日支払の給与・・・5/1-5/31
②20日締め・当月末払いの場合
4月30日支払の給与・・・3/21-4/20
5月31日支払の給与・・・4/21-5/20
6月30日支払の給与・・・5/21-6/20
実際に、給与が20万円の方が、4月から6月に支払われる残業代が増えたことにより、給与の総額を3で割って算出した平均額が25万円になったことを例に、どのくらい社会保険料の負担が増加するかを確認していきましょう。
【協会けんぽ 東京 令和5年度保険料額表(令和5年3月分(4月納付分)から)介護保険徴収有の場合】
社会保険料の個人負担額は毎月9,036円増加することになります。
●健康保険料
個人負担額は毎月3,546円増加
給与 | 標準報酬月額 | 個人負担額 |
20万円 | 200,000 (17等級) |
11,820円 |
25万円 | 260,000 (20等級) |
15,366円 |
●厚生年金保険料
個人負担額は毎月5,490円増加
給与 | 標準報酬月額 | 個人負担額 |
20万円 | 200,000 (14等級) |
18,300円 |
25万円 | 260,000 (17等級) |
23,790円 |
4月から6月の残業により、社会保険料の負担が増えて給与の手取り額が減ってしまう可能性があるというデメリットの観点からご紹介してきましたが、逆の観点から、標準報酬月額がアップすることのメリットを考えてみましょう。
・傷病手当金や出産手当金が増える
病気や怪我で働けなくなった時の傷病手当金や、妊娠や出産で休む時の出産手当金は標準報酬月額をもとに算出されます。
そのため、傷病手当金や出産手当金を支給される場合に支給額に影響があり、もらえる金額がアップする可能性があります。
・年金が増える
将来受け取ることができる老齢年金や、万が一のことがあった時の遺族厚生年金、自分が障害状態になった時の障害年金も標準報酬月額が関係しており、社会保険料アップにより年金額が増える可能性があります。
・所得税や住民税の負担が小さくなる
給与から社会保険料と共に差し引かれるものに所得税や住民税があります。
これらの税金は社会保険料が高くなると、給与から控除できる社会保険料額も大きくなるので、結果として所得税と住民税の負担が小さくなります。
4月から6月の残業を控え、標準報酬月額がアップしないようにすることが必ずしも得とは言えない面もあります。将来の給付よりも今の手取りを優先したいという方もいるでしょう。
標準報酬月額がアップすることでのメリットもあるため、社会保険料の仕組みを理解した上で働き方を考えていくといいでしょう。
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